それから数年後・・・
ようやく完全に再建が成った柳洞寺にて、その墓地の片隅に建立されている小さな墓に一人の女性がいた。
「・・・久しぶりね」
女性は花を供え手を合わせる。
「・・・もう何年経つのかしらね」
ぽつりと呟く。
「あの後は大変だったわ。結局あんた達は見つからずじまいで、皆泣き叫ぶし何人かはあんた達の後を追おうとしていた子までいたし」
その顔立ちは十分に美人と呼ぶにふさわしいのに表情は何の色もなかった。
「どうにか引き留めたけど、それから・・・後はもう皆ばらばら、ほとんど連絡も取れない子もいる。ディルムッド、イスカンダルは素早くこの世界から立ち去った、志貴の奥さん達は皆あの後すぐ消息を絶ったわ。カレンは風の噂だと我を忘れたように悪魔祓いの兵器に戻って、あんたが治癒した身体をボロボロにして先日息を引き取ったらしいわ」
それだけ言うとその眼を開く。
「そうそう、ここに来るの・・・多分今回が最後になると思う・・・ほとんどここには来れなくなると思うから。私ね・・・もうすぐ結婚するの。好きでもない男とね。全ては魔術師の・・・遠坂の家を存続させる為に。ルヴィアも先月結婚したし桜もあの戦争を生き残ったって言う、欧州のどこか名門の魔術師の家に嫁いだわ」
そう言ってから立ち上がる。
女性の脳裏に様々な思いが去来する。
それを彼女はただ一言で言葉と共に吐き出す。
「・・・じゃあね。愛していたわ・・・馬鹿」
踵を返してその墓から立ち去る。
その頬からは一筋の涙をこぼしながら。
誰もいなくなった墓地を風が通り過ぎた。
その墓には・・・『衛宮家代々ノ墓』と刻まれていた。